広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)と呼ばれる寄生虫はカタツムリから人間に感染する種として認識されています。
世界に広く分布していて、日本国内でも感染例があります。
分布と感染経路
この寄生虫の分布は南太平洋諸島、オーストラリア、東南アジア、インドなどの温帯、亜熱帯、熱帯地域と広い範囲に分布していて、特に症例が数多く見られるのが南太平洋諸島、台湾、タイなどの地域です。
日本国内では沖縄県から北海道と意外にも広い範囲で症例があります。
しかし、それは沖縄県や台湾に旅行に行ってからの発症なので、沖縄県とその諸島が中心と言えます。
国内の他の地域では関東、九州、四国、中国地方に見られます。
食用として輸入養殖されていたアフリカマイマイとジャンボタニシを生で、またはあまり加熱しないで食べている地域と、ナメクジも同じように食べている地域でよく発症しているようです。
成虫はドブネズミの中で産卵し、体外に排出されてからカタツムリとナメクジに経口摂取で取り込まれ、体内で孵化と成長をして最終的にはまたドブネズミへと戻って行きます。
途中のカタツムリとナメクジを人間が食べる、またはプラナリア、カエル、甲殻類といった動物が食べ、それらを人間が食べることによって感染します。
症状は激しい頭痛を始めとした発熱、嘔吐、意識混濁、四肢や顔面の麻痺、感染する寄生虫の数が多く、症状が重いと亡くなってしまう例もあります。
2000年6月に沖縄県で一人亡くなったのが日本初の例です。
以降は国内では亡くなる方は出ていませんが症例はいくつもあり、油断ならない状況です。
治療法も特効薬となるものがなく、ある程度の処置は受けられますが、体内の寄生虫の寿命が尽きて消えていくのを待つしかありません。
別の寄生虫の感染例
カタツムリから人間に感染する寄生虫はもう一つあります。
日本住血吸虫(にほんじゅうけつきゅうちゅう)と呼ばれ、広島県では「片山病」、山梨県では「水腫腸満(すいしゅちょうまん)」という名の地方病として古くから恐れられてきました。
こちらは淡水生で田んぼ等に潜むカタツムリのミヤイリガイ(またはカタヤマガイ)が原因とされ、農作業のために田んぼに入った人の手足の皮膚を通じて感染します。
すると皮膚炎から始まり、発熱、腹痛、下痢、腹腔内に体液がたまる腹水などの症状になり、最悪の場合は亡くなります。
しかし時代と共に研究が進み、発見と解明、田畑の環境改善、機械導入などによって徐々に減少し、1978年以降の感染者は出ず、1996年には流行の終息、2000年に終息宣言が発表されました。
まとめ
最後に上げた日本住血吸虫の仲介役となるミヤイリガイは、流行した地域ではほとんど見られなくなりしました。
最後に発見された地にはミヤイリガイのための慰霊碑があります。
自分達の身を守るためとは言っても、素直に納得できません。
大きく見たら自然淘汰の中の一つなのかもしれませんが、胸にしこりを感じてしまいます。
いつの時代もそうですが、上手に付き合えないことが悲しいですね。